双極症(双極性障害)とうつ病の違いとは?躁状態の見分け方と治療法を精神科医が解説
「うつ病だと思っていたのに、双極性障害と言われた」「気分の波が激しいのは性格のせい?」そんな疑問を抱えていませんか?双極症はうつ病と混同されやすく、正確な診断と治療法が異なる疾患です。この記事では、双極症とうつ病の違い、躁状態の見分け方、診断の流れ、そして具体的な治療法までをわかりやすく解説します。
「うつ病だと思っていたのに、双極性障害と言われた」「気分の波が激しいのは性格のせい?」そんな疑問を抱えていませんか?双極症はうつ病と混同されやすく、正確な診断と治療法が異なる疾患です。この記事では、双極症とうつ病の違い、躁状態の見分け方、診断の流れ、そして具体的な治療法までをわかりやすく解説します。
目次
「最近、気分の浮き沈みが激しい」「元気すぎて眠れない日が続いたかと思えば、急に何もできなくなる」——そんな経験をお持ちの方の中には、自分の状態が「うつ病」なのか「双極症(双極症)」なのか、よくわからないと感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、双極症はうつ病と症状が重なる部分があるため、最初の受診では「うつ病」と診断されるケースも少なくありません。しかし、この二つは原因も治療法も大きく異なるため、正確に見分けることがとても重要です。誤った治療が続くと、症状が悪化してしまうこともあるのです。
この記事では、双極症とうつ病それぞれの特徴、躁状態・軽躁状態の見分け方、診断の流れ、そして薬物療法や精神療法を含む治療法について、精神科専門医の監修のもとわかりやすくお伝えします。「自分はどちらかもしれない」と感じている方に、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。
双極症(双極症)とは、気分が高揚する「躁状態(そうじょうたい)」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。かつては「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在は国際的な診断基準であるDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)やICD-11(国際疾病分類第11版)では「双極症」「双極症」として分類されています。
一方、うつ病(単極性うつ病)は、躁状態を伴わず、抑うつ状態が主体となる疾患です。双極症との最大の違いは、「躁状態または軽躁状態があるかどうか」という点です。うつ状態だけを見ると両者の症状は非常によく似ているため、躁状態の有無を丁寧に確認することが診断の鍵となります。
双極症の生涯有病率は約1〜2%とされており、日本国内では数十万人以上が罹患していると推計されています。発症のピークは10代後半から30代とされており、若い世代にも決して珍しくない疾患です。(参考:日本精神神経学会、厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」)
双極症はさらに、躁状態の重さによって「双極I型障害」と「双極II型障害」の二種類に分けられます。
| 分類 | 特徴 | 入院の必要性 |
|---|---|---|
| 双極I型障害 | フルの躁状態(1週間以上続く強い高揚感・興奮)を伴う | 躁状態が重篤な場合、入院が必要になることがある |
| 双極II型障害 | 軽躁状態(4日以上続く比較的軽い高揚感)とうつ状態を繰り返す | 比較的外来治療が可能なことが多い |
双極II型障害は、躁状態が軽いため本人や周囲が「ちょっと元気なだけ」「性格が明るい」と見過ごしてしまいやすく、うつ病として長年治療されてきたというケースも報告されています。
双極症の診断において最も重要なのが、躁状態または軽躁状態の有無の確認です。「うつがひどくて受診したのに、なぜ元気だった頃のことを聞かれるの?」と感じた方もいるかもしれませんが、その「元気だった頃」こそが診断のカギになります。
DSM-5に基づく躁状態の主な症状は以下の通りです。気分の高揚または易刺激性(ちょっとしたことで怒りやすくなること)が持続し、以下の症状のうち3つ以上(易刺激性が主な場合は4つ以上)が認められる状態が、躁状態では7日以上、軽躁状態では4日以上続きます。
躁状態では本人が「絶好調」と感じているため、問題行動(大きな買い物・衝動的な投資・人間関係のトラブルなど)が起きていても、自分では気づきにくいことがあります。ご家族や周囲の方の気づきが受診のきっかけになることも多いです。
軽躁状態は躁状態よりも症状が軽く、「なんとなく気分が良くて、仕事が捗る」「アイデアがどんどん出てくる」「睡眠が少なくても平気」という状態です。社会生活に大きな支障が出ない程度であることが多いため、本人が「調子がいい時期」として肯定的に捉えていることもあります。しかし、その後に強いうつ状態が訪れるというパターンが繰り返される場合は、双極II型障害の可能性があります。
双極症がうつ病と間違われる理由の一つは、初めて医療機関を受診するきっかけが「うつ状態」であることが多いからです。躁状態や軽躁状態の時期は、本人が「絶好調」と感じているため受診しようと思いません。一方、うつ状態が来ると気力・体力ともに低下し、ようやく「助けを求めよう」という気持ちになります。
そのため、初診時に「うつ病」と診断されることは珍しくなく、海外のデータでは双極症患者の約30〜40%が、初診時にうつ病と診断されていたという報告もあります。双極II型障害ではさらにこの傾向が強まります。
また、うつ病と双極症のうつ状態は、症状の表れ方がよく似ています。気分の落ち込み、意欲の低下、睡眠障害、食欲変化、集中力の低下——これらはどちらでも見られます。ただし、双極症のうつ状態には過眠(寝すぎる)・過食・体が鉛のように重く感じる感覚(鉛様麻痺)が比較的多いとされており、これらが見られる場合は双極症の可能性を念頭に置いた評価が必要です。
さらに、双極症をうつ病と誤診して抗うつ薬のみを使用した場合、躁転(うつ状態から急に躁状態に転じること)を引き起こすリスクがあるとされています。このため、精神科・心療内科では「現在のうつ状態」だけでなく、「過去に異常に元気だった時期はないか」を丁寧に確認することが重要な診察プロセスとなっています。
双極症の診断は、血液検査や脳画像検査などで確定できるものではなく、医師が行う問診と行動観察を中心としています。DSM-5やICD-11の診断基準に照らし合わせながら、現在の症状・過去の病歴・生活への影響を総合的に判断します。
診察では、主に以下のような点を確認します。
診断の補助として、気分障害の評価に用いられる質問票(たとえば気分障害質問票:MDQ)が使われることもあります。また、甲状腺機能異常や神経疾患など、気分症状を引き起こしうる身体疾患を除外するために、血液検査が行われることもあります。
「過去に躁状態があったかどうか」を正確に思い出すのは、意外と難しいものです。ご家族や身近な方と一緒に受診し、周囲から見た本人の様子を医師に伝えることが、正確な診断の助けになります。
双極症の治療は、うつ病の治療と大きく異なります。気分の波を安定させることが治療の基本となり、薬物療法と精神療法(心理社会的治療)を組み合わせて行うのが標準的なアプローチです。
双極症の薬物療法の中心となるのは、気分安定薬と呼ばれる薬です。気分の高低両方の波を抑える効果があり、再発予防にも重要な役割を果たします。代表的な気分安定薬としては、炭酸リチウム(リチウム)やバルプロ酸、ラモトリギンなどがあります。また、非定型抗精神病薬と呼ばれる薬が気分安定薬として使用されることも増えています。
双極症のうつ状態に対して、一般的な抗うつ薬を単独で使用することは、躁転のリスクから原則として推奨されていないことが多く、日本うつ病学会の双極症治療ガイドラインでもこの点が強調されています。治療薬の選択は、型(I型・II型)や現在の状態(躁・うつ・混合)、これまでの治療歴によって異なるため、専門医との相談が不可欠です。
「うつ病の薬をもらっているが、なんとなく効いている気がしない」「薬を飲むとかえって気分が激しくなる気がする」という方は、双極症の可能性も含めて一度精神科で評価を受けることをおすすめします。自己判断で薬を増減したり中断したりすることは、症状を悪化させるリスクがあります。
薬物療法とあわせて、精神療法(サイコセラピー)も双極症の治療に重要な役割を担います。主なアプローチには以下のものがあります。
薬だけでなく、生活リズムの管理や睡眠の確保、ストレスのコントロールが再発予防に大きく寄与することがわかっています。治療は「薬を飲むだけ」ではなく、日常生活全体を視野に入れたものになります。
「精神科を受診したいけれど、近くに専門医がいない」「仕事や育児で通院する時間が取れない」「まず話だけでも聞いてもらいたい」——北海道にお住まいの方からは、こうした声をよく耳にします。北海道は広大な面積を持つ地域であり、精神科・心療内科への物理的なアクセスが難しいエリアも多く存在します。
そのような方にとって、オンライン診療は一つの選択肢になります。北海道オンラインクリニック(医療法人鳳應会)では、精神科専門医・精神保健指定医によるオンライン診療を提供しており、スマートフォンやパソコンから、自宅にいながら専門医の診察を受けることが可能です。
初診からオンラインで対応しており、うつ病・双極症・不安障害・不眠症など、幅広い精神科的な相談に応じています。「まず自分の状態を診てもらいたい」という段階からでも、お気軽にご相談いただけます。診察の中で、必要に応じて対面での検査や他院との連携についてもご案内しています。
オンライン診療では、問診・診察・処方(一部の薬剤)までオンラインで完結できる場合があります。ただし、双極症の薬物療法で使用する気分安定薬の中には、血中濃度のモニタリングが必要なものもあります。その場合は、近隣の検査機関との連携についてご説明します。まずはご相談ください。
「自分が双極症かもしれない」と感じていても、受診をためらってしまう方は少なくありません。「大げさかな」「忙しくて時間がない」「精神科に行くことへの抵抗がある」——そういった気持ちはとても自然なことです。
ただ、一つだけお伝えしたいことがあります。双極症は、適切な診断と治療を受けることで、多くの方が安定した生活を送れるようになっている疾患です。逆に言えば、診断されないまま適切でない治療が続くと、症状の悪化や社会生活への影響が大きくなるリスクがあります。
「気分の波が激しい」「うつ病の治療を続けているのに、なかなか良くならない」「元気すぎる時期と落ち込む時期が交互に来る」——こうした気になるサインがあるならば、一度専門医に相談してみることを検討していただければと思います。
精神科・心療内科の受診は、弱さの表れではありません。自分の状態をきちんと知り、適切なケアを受けることは、自分自身を大切にすることです。「もしかしたら」と思ったそのタイミングが、受診を考える良い機会かもしれません。一人で悩み続けなくていいのです。
本記事は、医療法人鳳應会・北海道オンラインクリニック統括医師 道塚瞬(精神科専門医・精神保健指定医)の監修のもと作成しています。個別の診断や治療については、必ず医師にご相談ください。
北海道オンラインクリニック(医療法人鳳應会)では、統括医師・道塚瞬が 日本専門医機構認定 精神科専門医および 厚生労働省 精神保健指定医の両資格を有しており、 初診から必ず専門医が担当します。
「近くに専門医がいない」「通院が大変」「プライバシーが心配」という 北海道全域の方々に、自宅から質の高い精神科医療をお届けするために、 オンライン遠隔診療を提供しています。